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July 21, 2020by Mamoru Kakuda

米国特許法287条(a)は、patented articleについて特許番号のマーキングをしていない場合、侵害者に対する侵害の通知(訴訟の提起もこの通知とみなされます)前の損害に対する賠償は得られないことを規定をしています(AIA以降は、ネット上にアップするいわゆるバーチャルマーキングでもよいことになっています)。しかし、方法クレームだけを含む特許については、patented articleが存在しませんので、一般的には、このマーキングの義務は発生しないということになります。

2020年7月14日に、Packet Intelligence LLC v. NetScout Systems, Inc.において、米国CAFCは、方法でクレームした特許の侵害において、287条(a)のマーキング義務を回避して製品売上をロイヤリティーのベースに含めることはできない場合がある、と判示しました。

Packet Intelligence社は、コンピューターネットワークを通じてパケット交換をモニターする方法に関する3件の特許を持っていました。そのうち1件は装置と方法に関するものであり、残り2件は方法に関する特許でした。これらの特許に基づき、Packet Intelligence社は、NetScout社を特許侵害で米国連邦地方裁判所に訴えました。

連邦地裁の裁判で、陪審員は、Packet Intelligence 社の特許の有効性と、NetScout社の侵害の事実を認定し、訴訟提起前の賠償も含めてNetScout社はPacket Intelligence社に賠償すべきであると評決し、裁判所はそれに基づいて判決を下しました。NetScout 社はCAFCに控訴しました。

CAFCは特許の有効性とNetScout社の侵害は認めましたが、訴訟提起前の損害賠償に関しては、否定しました。

製品クレームを含む特許に関しては、Packet intelligence社は自分では製品を販売していませんでしたが、数社にライセンスをしていましたので、ライセンシーがpatented articleにマークをしているかどうかが問題でした。Arctic Cat Inc. v. Bombardier Recreational Prods. Inc., 876 F.3d 1350, 1368 (Fed. Cir. 2017) によると、マーキングの有無は、(1)被疑者がまず、patented article(であると被疑者が信じるもの)がマーキングされずに製造されているという証拠を提出する、(2)次に特許権者がそのマークされていない製品が特許を実施したもの(patented article)ではないことを示す、という2段階で判断します。Arctic Catは、本件の評決後に出た判決です。

連邦地裁における陪審員への説明では、NetScout社にマーキングされずに製造されているものがpatented articleであることを示さなくてはならない、としていました。CAFCはArctic Catの判断方法を採用し、NetScout社がマーキングされていない製品として挙げた製品がpatented articleではないということをPacket Intelligence社は十分に立証しておらず、製品クレームに関して、訴訟前の賠償金は認められない、と判断しました。

方法クレームのみを含む2件の特許に関しては、Packet Intelligence社は、NetScout社が行っていた内部テスト、客先サポートや客先のトレーニングなどでの特許の使用がNetScout社の製品の売り上げに貢献しているので、その売り上げをベースにした損害賠償を得ることができると主張していました。CAFCはこの主張を否定しました。まず、CAFCは、NetScout社のそのような行為に基づいて製品売上に基づいた損害賠償が得られるという主張をサポートする証拠がないと判断しました。さらに、たとえ客先サポートや客先のトレーニングなどでの特許の使用がNetScout社の製品の売り上げに貢献しているとしても、Packet Intelligence社はマーキング義務を果たしていないので、単に、NetScout社の方法クレームの侵害行為が売り上げを伸ばしているという主張をするだけでは、特許法287条を回避して製品売上をロイヤリティーのベースに含めることはできない、と判断しました。

by Mamoru Kakuda

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