aldeburgh-164387_1280.jpg
February 5, 2021by Mamoru Kakuda

地裁で非侵害が確定した場合にIPRの請願者はIPRの結果について、CAFCに控訴で争えるかどうかについて、CAFCが判断した最近の判決があります(ABS Global, Inc. v. Cytonome/ST, LLC. (Fed. Cir. January 6, 2021)) 。このケースでは、特許権者は、連邦地裁で非侵害のサマリージャッジメントが出た後、サマリージャッジメントの決定に対して控訴するつもりはない旨の宣誓書を弁護士により提出していたので、IPRの決定についての争いはmoot (実益なし) になっていると判断され、控訴はdismiss(却下)されることになりました。

Cytonome 社はミクロ流体デバイスに関する特許を複数所有しており、これらの特許を侵害するとしてABS社を含む数社を連邦地方裁判所に提訴しました。ABS社はそのうちの一つの特許は無効であるとしてIPRの請願を提出し、特許庁はこの特許のいくつかのクレームは無効であるという最終決定を出しました。その2週間後、連邦地裁はABS社のmotionを認め、ABS社の製品はIPRの対象になった特許を侵害していないとの、サマリージャッジメントの決定を出しました。それから2か月後、ABS社は、IPRの決定について、CAFCに控訴しました。さらにその3か月後、連邦地裁は、残りの特許に関する陪審裁判をを行いました。IPRの請願に対する応答において、Cytonome社は連邦地裁のサマリージャッジメントの決定に対して控訴するつもりはない旨の宣誓書を弁護士により提出したうえで、ABS社には実際の損害がないので、CAFCへの控訴について、Article IIIの原告適格がないと主張しました。その約4か月後、地裁は、ABS社がIPRの対象になった特許を侵害していない旨の最終判決を出しました。

Cytonome社はArticle IIIの原告適格がないという主張をしていましたが、ABSはその反論の中で、問題はArticle IIIの原告適格ではなく、mootness の有無 (実益があるかどうか) であるとして、IPRの決定についての争いはmootではないと反論しました。最終的に、以下の理由で、CAFCは、IPRの決定についての争いはmoot (実益なし) になっていると判断し、控訴をdismiss(却下)しました。

    1. 自発的な譲歩によるmootnessの問題は、Already, LLC v. Nike, Inc., 568 U.S. 85 (2013) の最高裁判決で示されたフレームワークで判断される。このフレームワークでは、ケースがmootになるためには、まず自発的に譲歩した当事者側が問題になっている行為すべてについて譲歩したことを示す必要がある。そのうえで、反対の当事者側が、その譲歩に含まれない活動を行なっているか、その具体的なプランがあることを十分に示さない場合に、そのケースはmootになる。
    2. この事件においては、Cytonome社の控訴権の放棄は実効的に連邦地裁の非抵触の判決を最終的なものにしている。一方で、ABS社はIPRの対象になった特許を侵害する行為をしているか、その具体的プランがあること示す証拠を提出していない。
    3. ABS社は、Fort James Corp. v. Solo Cup Co., 412 F.3d 1340 (Fed. Cir. 2005) に基づいて、このケースはmootではないと主張しているが、Fort James はcounterclaimという同じ手続き内での争いについてmootにはならないということを判示しているのであって、異なる手続き内での争いがmootであるかどうかが問題となっている本件とは区別される。
    4. ABS社は、代替案として、本件は、相手方の一方的な譲歩によって、裁判管轄理由が消失したのであるから、その救済はdismiss (却下)によるのではなく、vacate (破棄)によって行われるべきであると、口頭審理の際に主張している。しかし、この主張は時期を逸しており、採用できない。

なお、Prost 判事は、上記の (4)の点について、本件におけるmootnessは一方的な譲歩によるものなので、このケースを却下(dismiss)したのではfairでなく、破棄(vacate)として当事者の権利を保持することが裁判所の義務であるという、dissentをしています。

Mamoru Kakuda

by Mamoru Kakuda

Mamo’s extensive background includes a tenure of over 20 years as an IP professional in a renowned Japanese chemical company. During this time, he developed an elite insight into Japanese companies’ operations and IP practices. Consequently, Mamo is esteemed for his astute counsel which guides his diverse clientele on their best course of action, obtaining patents effectively and efficiently.