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March 2, 2021by Mamoru Kakuda

相反するクレーム文言の定義を審査段階で主張したために、クレームがindefiniteであり、無効と判断した判決を2021年2月10日にCAFCが出しています (Infinity Computer Products v. Oki Data Americas, Inc. (Fed. Cir. Feb. 10, 2021) 。

Infinity社は、4件の特許を侵害するとしてOki社をデラウエア州区連邦地方裁判所に提訴しました。その代表的なクレームには、以下の文言が含まれていました。

A method of creating a scanning capability from a facsimile machine to a computer, with scanned image digital data signals transmitted through a bi-directional direct connection via a passive link between the facsimile machine and the computer, comprising the steps of:…

Infinity社は審査段階で引例であるPerkinsを克服するために、明細書には記載のない “passive link” という語をクレームに導入したうえで、Perkinsでは、モデムが一体化されたカードデバイスをコンピュータとファクシミリのインターフェース内に必要としているが、本発明では必要とされない、と主張しました。特にInfinity社は、Perkinsでは、ファクシミリの信号はカードデバイスで処理されてから、コンピュータのI/Oバスに到達するので、本発明とは異なる、と主張しました。

その後、Infinity社は再審査において、別の引例 (Kenmochi) を克服するためにクレームは親出願に基づく優先権を有効に引いていると主張しました(対象特許は、その親出願の一部継続出願でした)。Infinity社は親出願にある、コンピュータ内にモデムが含まれている図を基に、コンピュータのポートとファクシミリを結ぶRJ-11 電話線が “passive link”であり、クレームは親出願の開示にサポートされていると主張しました。最終的に、特許は維持されました。

地裁では、Oki社は、どこで “passive link”が終わるかという点について、Infinity社は相反する立場を審査中及び再審査中にとっているので、クレームはindefiniteであり、無効である、と主張しました。地裁はこの主張を認め、特許は無効であるとの判断を下しました。Infinity社はCAFCに控訴しました。

CAFCはOki社の主張を以下の理由で認め、地裁の判決を affirmしました。

    1. Indefinitenessは一貫性のない審査中でのstatementによって生じることがある。Teva Pharms. USA, Inc. v. Sandoz, Inc., 789 F.3d 1335, 1341 (Fed. Cir. 2015) 。Infinity社は審査中に、どこで “passive link” が終わるかについて矛盾する立場をとっている。Pekinsに対するInfinity社のstatement によると、当業者は、 “passive link” はコンピュータのポートでは終わらず、コンピュータのI/Oバスにまで到達すると考えるだろうが、Kenmochiに対するInfinity社の statementによると、当業者は、 “passive link” は、コンピュータのポートで終わると考えるだろう。したがって、合理的な確実性をもって当業者はクレームの範囲を定めることができない。
    2. Infinity社は、Perkinsに対するInfinity社のstatement はデータがI/Oバスまでinterrupt されることなしに到達するといっているわけではなく、データがpassive link の中を流れるといっているだけであると主張しているが、実際にそのような主張をしたとは認められない。
    3. Infinity社は、多くの、審査中に行った明示的な “passive link”の定義を挙げているが、それは、一つの立場を表しているだけであり、矛盾の解消には役立たない。
    4. Infinity社はまた、専門家証言がdefiniteness の根拠であると主張しているが、その専門家証言は単に、再審査での立場を繰り返しているだけである。また、この矛盾は記録によって明らかであり、外部証拠を採用する必要もない。
    5. Infinity社はまた、たった一つの矛盾するstatementだけで、indefinitenessと認定することは不当であると主張しているが、一つのstatement で十分なことはTeva事件で示されている。
    6. また、 “passive link”とは別の理由で本発明とPekinsとは区別されているとInfinity社は主張しているが、Infinity 社は実際に “passive link”という語でも発明をPerkinsと区別しているのであるから、そのことは indefiniteness の議論とは関係がない。
    7. さらに、クレーム内の “computer interface”という語の存在が一貫性のないstatement とある程度調和しているというInfinity社の主張も採用できない。
    8. 最後に、Infinity社は “computer”という語は、非常によく知られ、定義の明確な語であると主張しているが、このでのindefinitenessは、 “passive link”と “computer”との関係にあるのであるから、この主張も採用できない。

以上のように、審査中で一貫性のないクレーム解釈を行うと、 indefinitenessに基づく無効になる場合がある点に注意をする必要があります。

by Mamoru Kakuda

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